院長コラム

臓器脱で使われるペッサリー〜基本的な知識〜改めて解説します

2025/02/12

膀胱脱(または膀胱瘤)子宮脱の治療方法の一つとして、ペッサリーによる治療があります。骨盤底筋体操でも、症状が軽くならず、手術かペッサリーかの治療を提案された時、悩まれる方は少なくないと思います。

どちらが良いか、は、どちらも良い治療方法ですので、生活スタイルや、持病、年齢、など、患者さんによって、どちらがより適しているか、ということです。

今回は、治療方法を比べる、のではなく、いったいペッサリーとは、どんなものなのか?どうして効果が出るのか?どんなふうに入っているのか?ペッサリーを入れていらっしゃる方からも、ご質問をいただくので、骨盤とペッサリーの仕組みについて詳しく書いてみます。

ちなみに、ペッサリーの種類、が巷でいろいろ紹介されていますが、実際に広くつかわれているのは、保険診療のペッサリーです。特殊な場合を除いて最初から自費のペッサリーを使うことはまずありませんので、最も多く使われているペッサリーについて知っておくことが、他の治療を含めて、今後の治療について理解する上で大前提です。

というわけで、ペッサリーの基本について、です。※ちょうど良い解剖図がないため、図は、大野自作の手書きです。ご容赦下さい。*最後に、本文の内容を一部省略した動画があります。ペッサリーを入れていて気になる症状がある方は、ぜひ本文をお読みください。

Q1.ペッサリーはどんなふうに入っているの?

Q2.婦人科のがん検診は受けられますか?

Q3.サイズの合っているペッサリーを入れても、まだ臓器が下がってくるがどうして?

Q4.ペッサリーを入れてから尿漏れするようになったがどうして?

Q5.ペッサリーを入れてから、便が出にくい、残る感じがあるがどうして?

Q1. ペッサリーはどんなふうに入っているの?

A. まず、骨盤の構造を見てみましょう  女性の骨盤を真横から見たところです

正常な状態と、膀胱脱の状態を比べてみると、膣の内側の粘膜が裏返しになって、膣の外に出ていることがわかりますね、膀胱脱、といっても膀胱の壁が出ているのではなく、つるつるに見えているのは膣の内側の壁なのです。

直腸瘤、は、膀胱と同じ原理で、膣の後ろの壁が押されて出てくるものです。やはり、直腸そのものではなくて、膣の内側の壁が外に出てきます(図は省略していますが、前後を入れ替えて想像なさってください)

子宮脱、は、子宮がすとんと下に下がって出てきますので、子宮そのもの(子宮口)が見えてきます。

保険診療のペッサリーとは?

塩化ビニル製のドーナツ型をしています。

少し押しつぶしながら出し入れします。

外来で使われているペッサリーはどの医療機関でも同じ一種類かと思われますが、直径サイズはたくさんあり、患者さんに合うサイズのペッサリーを使います。当たり前ですが大きいと出し入れする時に痛みが強くなりますし、小さいと落ちてしまいますので、入れ始めの時にはサイズを調整します。

ペッサリーを入れてみたところです。

 

横からみると、膣の奥に縦に入っているイメージです。

このように奥側を子宮にはめるように入れていますので、子宮を摘出した方がペッサリーを入れると、安定せず、落ちてしまいます。

ペッサリーは固定されていませんから、膣の中で動いているのが普通です。立ったり座ったりする動作で、膣の中がぐにゅっという感じは、あっても問題ありません。

動く感じが強い場合は、サイズをあげることもあります。

 

Q2. 婦人科のがん検診は受けられますか?

A.   ペッサリーの出し入れに特殊な器具は必要ありませんので、問題なく受けられます。

検診センターによっては、事前に外してからきてください、と言われることはあるようです。

 

Q3. サイズの合っているペッサリーを入れても、まだ臓器が下がってくるがどうして?

A.  直腸瘤がある方や、膀胱がペッサリーの手前から少し出ている可能性があります。

臓器脱は、必ずしも一つの臓器だけが出てくる、とは限りません。

同時に膀胱脱と直腸瘤が起こっている方の場合、

治療前は、大抵どちらか出やすい方が膣の外に出てきて症状を起こしています。

このようにペッサリーで、膀胱と子宮はおさえられていても、膣の後ろの壁がおさえられていませんので、膀胱が出てこなくなった分、直腸瘤が症状を起こしてしまう、というわけです。

また、ペッサリーの手前から膀胱がはみ出して少し出てくる場合があります。膀胱脱の程度が強い=膣の壁の緩みが強い、方に多くみられます。ペッサリーのサイズを上げられるときは上げます。完全に抑えることはできませんが、ペッサリーを入れる前に比べて、出てくる分量が少ないので、理由がわかると気にならない方が多いようです。

 

Q4. ペッサリーを入れてから尿漏れするようになったがどうして?

A.    これまで、潜在的にあった腹圧性尿失禁の症状が、膀胱脱により隠されていました。ペッサリー治療により膀胱の形が戻ったことで、症状が現れたためです。

おしっこの色を青くしていますが、左右比べると一目瞭然だと思います。

このように、膀胱脱の治療前は、おしっこが出にくい=漏れにくい、状態だったわけですが、ペッサリーを入れることで、膀胱の形がほぼ正常になりますので、もともと腹圧性尿失禁がある方は、尿が出やすい=漏れやすい、となるわけです。

この場合は、骨盤底筋体操、内服治療、形の違うペッサリーを試みる(自費)、尿失禁手術を含めて手術を検討するきっかけになることがあります。

 

Q5.ペッサリーを入れてから、便が出にくい、残る感じがあるがどうして?

A.   体格や、ペッサリーの大きさ、子宮の角度によっては、ペッサリーが直腸を押す形になり、硬い便が通りにくくなることがあります。また、直腸瘤の症状が出ている可能性があります。

ペッサリーが落ちない程度に、サイズを下げてみて、症状が改善するか試みることがあります。力んで排便をすることは骨盤底筋にとっても望ましくありませんので、便の硬さを調節することが勧められます。

また、直腸瘤の症状で便が残る感じがすることがあります。こちらも、Q3と重複しますが、膀胱脱と直腸瘤が同時にある方にみられます。力まないで排便する習慣が重要です。

ご予約ご相談はお気軽に

当院は、医師をはじめ、スタッフ全員女性です。
つらい症状はご自分だけで悩まず、
ご相談にいらっしゃいませんか。

お電話でのお問い合わせはこちら
048-788-2029※ご連絡は診療時間内にお願いいたします。

当院は「泌尿器科クリニック」です。
婦人科の診察・子宮がん検診は行っておりません。

診療カレンダー

2025年 3月
23
24
25
26
27
28
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
1
2
3
4
5
2025年 4月
30
31
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
1
2
3

休診日

午後休診

午前休診